Kempe's Universality Theorem
「任意の代数的平面曲線に対し、その曲線を描くリンケージが必ず一つ構築できる」
言い換えると、
「代数曲線の任意の有界部分は、適切に選ばれたリンケージの関節の一つの動きによってトレースできる」
貴方の名前を描くリンケージも作れるよ!
Kempeは、証明に用いた手法が実用的でないことを認識しており、より簡単な方法を見つけることを「数学的芸術家」に求めている。
特定の曲線を描く簡単なリンケージを見つけることは今も数学者の課題の一つである。
定理
$ Cを平面上の代数曲線の一部とする。
正確には実数係数を持つある多項式$ \phi(x,y)が$ \phi(x,y)=0を満たす点の集合と閉ディスクとの共通部分とする。
このとき、ある関節の軌跡が正確に$ Cと一致する平面上のリンケージが存在する。
証明
https://gyazo.com/cb03c7f6a9ac6e1dd0c693eb250901f0
上の図のように設定する。
$ \phi(x,y)を代数曲線とし、これをなぞりたい関節を$ pとする。
原点を$ Oとすると、$ p = (x,y)の座標は角度$ \alphaと$ \betaのコサインを使って次のように表せる。
$ x = a\cos{\alpha}+b\cos{\beta}
$ y = a \cos(\alpha - \frac{\pi}{2})+b \cos(\beta - \frac{\pi}{2})
これを$ \phi(x,y)に代入し、三角関数の積和公式
$ \cos{A}\cos{B} = \frac{1}{2}\cos(A+B)+\frac{1}{2}\cos(A-B)
を繰り返し使えば、xとyのべき乗や積はすべて角度の和のコサインの形に書き換えることができる。一般形は
$ c + \sum_{i}c_i\cos(r_i\alpha+s_i\beta+\delta_i)
となる。ここで$ cと$ c_iは実数の定数、$ r_iと$ s_iは整数で$ \delta_i\in \lbrace 0,\pm \pi/2 \rbraceである。
それぞれの項の$ c_iをリンク長とし、角度$ r_i\alpha+s_i\beta+\delta_iを$ \alpha,\betaからリンケージで構築できれば万能性定理が証明できる。$ cは原点からずらす距離。
で、中継器、加算器、乗算器を使う。乗算器は任意の角度を$ r_i倍でき、それを加算器で足し合わせる。さらに中継器で和の各項を繋げる。 これで$ pを$ \phi(x,y)-cに保つことができる。
やったね!
補記
Kempeの証明に用いられたリンケージを単純化するために、いくつかアプローチが採られてきた。
証明に用いられたリンケージは、加算器、反転器、乗算器、並進器の4つ。
リンケージ以外の手法を用いることができるならば、角度の加算と減算には歯車の差動を、角度の乗算には歯車列を、回転角度の定数倍にはプーリベルトを用いることで簡略化できる。
Kempeの証明の複雑さの原因は、この定理が全ての代数曲線に適用されるという一般性にもある。このパラメータ化された代数曲線に、二元クオータニオン代数を用いて運動多項式を因数分解し、リンケージを得る。